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ぶらんこ乗り
ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意な男の子。声を失い、でも動物と話ができる、つくり話の天才。もういない、わたしの弟。―天使みたいだった少年が、この世につかまろうと必死でのばしていた小さな手。残された古いノートには、痛いほどの真実が記されていた。ある雪の日、わたしの耳に、懐かしい音が響いて...。物語作家いしいしんじの誕生を告げる奇跡的に愛おしい第一長篇。

  • 彼は心に傷を負った。
    人を信じきれなかった。

    彼は天才だ。
    面白い話を聞かせて、
    滑稽な役を演じて、
    人を元気づける。

    でも、それは
    ほんとうの彼じゃない。

    臆病で、強がりで、
    嘘ばかりついて。

    だれよりも傷つきやすい、
    繊細な人。
    それこそがおどけてばかりいる、彼の本心だ。

    親しい人にさえも、
    心に鍵をかけて閉ざした。

    独りぼっちになるのが、
    こわいから。

    ほんとうはみんなと一緒にいたいけど、
    傷をつけてしまうのが嫌だから。

    だから、君が生み出した生き物たちは、
    こんなにも躍動感があって、愛しいんだ。

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    ※この曲を生み出した小説に、
    感謝の気持ちを込めて。